リウマチ専門医に聞く「リウマチ治療のこれから」

インタビュー第二弾!リウマチ専門医に聞く!リウマチ治療のこれから

リウマチは、内科的な視点と整形外科的な視点、あらゆる方向からの診察・治療を必要とする疾患です。

整形外科医という視点からみた“リウマチ”に対する考え方をお聞かせください。

私自身、元々は整形外科の中でも“腫瘍”が専門で、軟部組織から骨まで、脊椎、股関節、膝関節など、整形外科が対応するあらゆる分野での手術が必要でした。昨今では整形外科の中でも、脊椎専門、股関節専門、手の外科が専門など、分野が細分化していますが、私自身は、もともとが腫瘍専門でしたから、「いろいろ診るけど、手術は中途半端」ではいけませんので、それぞれの専門の医師からの及第点をいただくべく、多くの部位での手術で研鑽を積んできました。結果的に“整形外科分野のジェネラリストを目指す”というスタイルになりました。私は以前、北陸方面の医療機関に勤務していたのですが、こういった流れの中で「地方にいくほどリウマチ専門医がいない」という現実と直面しました。それならば「リウマチについても勉強して、リウマチ患者さんも診察できる専門医になろう」と決心したのです。

リウマチは、内科的な視点と整形外科的な視点、あらゆる方向からの診察・治療を必要とする疾患です。かつてのリウマチ治療は、ステロイドの投与が主流でしたが、長期投与により骨粗しょう症や関節の変形を併発することが多く、整形外科的な関与が必要になります。関節が痛くて歩けない、重度な関節の変形があるなど、リウマチ患者さんの悩みは尽きることがありません。そういった状況の中で、医師として何ができるのか、患者さんにとってベストな治療は何か、あらゆる方向から検討していくものだと考えています。

これまでの薬物治療に加え、手術療法も組み合わせることで日常生活での負担を軽減させる

先生が考える“リウマチ治療の現在と未来”をお聞かせください。

私は、検査データだけではなく、触診をすることで、患者さんの全身状態を評価すべきだと考えており、リウマチ患者さんの診察の際には、必ず触診をします。一般的なリウマチの診断評価基準として、DAS28が重要であるとされていますが、他にもいくつかの診断基準があります。患者さんの診察では、腫脹関節と圧痛関節の数を確認することが、重要なのです。もちろん、血液検査の結果から、ある程度「リウマチが良くなった」などを判断することはできるでしょう。しかし、腫脹関節や圧痛関節の状態が良くなっているかを確認しなければ、本当の意味で「リウマチが良くなった」とは判断できません。「患者さんの全身の関節を触診して、痛みがあるかをきちんと診る」ことが一番重要だと思います。そこから、画像検査や超音波検査による評価、あるいは血液検査による評価を行います。これは、治療薬の効果判定にもつながる診療行為です。どの薬をどの程度使用したから、効果が出ているのか、あるいは効果が出ていないのか、今の重症度はどのくらいなのか。これらは、関節を触診して、初めて分かることなのです。
それから、かつてはリウマチの経過が長くなることで、関節の変形を起こす患者さんが多く、かなり変形が進んでから、初めて受診する患者さんが多かったように思います。手術するにしても、いくつもの関節を、何回かに分けて手術する人もいて、患者さんの日常生活への影響も、かなり大きかったと思います。しかし現在では、良い薬が出来ましたし、“早期発見・早期治療”が必要、かつ、有効性の高い薬を上手に使えば寛解も望めるものになってきたのです。

最近の研究により、リウマチの初発年齢は、二峰性だといわれるようになりました。若年(20~40歳代)での初発は有名ですが、近年では60~70歳代、80歳を超えてから発症というケースもあります。ですから、鑑別診断の際には「高齢だからリウマチの発症(初発)ではない」という思い込みをしてはいけない、ということなのです。
それから、これは未来にもつながることですが、現在の日本で使用できるリウマチの治療薬の使い方が変わってくる可能性があります。まず、第一選択として使用可能な薬である「メトトレキサート(MTX)」の投与可能量が増えました。また、別の薬と組合せることで、全身的なリウマチの病勢をコントロールできることが分かってきました。さらに、例えば膝関節の滑膜がリウマチにより増えて関節の変形や痛みを生じている場合、手術により滑膜を切除することで、全身的な炎症をある程度抑えられることも分かってきました。つまり、リウマチ治療は以前からの薬物治療だけではなく、手術療法も組み合わせることで、患者さんの日常生活への影響が少なくなる可能性を秘めている、ということです。今後は、こういった治療法が広まってくるのではないかと考えています。

行徳総合病院について

最後に、行徳総合病院での診療体制をお聞かせください。


当院の整形外科には、常勤医師が3名在籍しており、一部を除き、予約なしでも受診ができます。
リウマチ患者さんの診療は、私自身が専門外来を開設していますが、基本的にはどの医師でも診療が可能です。

また、当院では人工関節・リウマチの治療にあたる“人工関節・リウマチセンター”を開設しており、薬物による治療から手術療法まで、一貫した診察・治療を行っています。手術療法では、人工股関節置換術、人工膝関節置換術(体に負担の少ない術式である、MIS=最少侵襲手術)、リバース型人工肩関節置換術(RSA)、指の人工関節置換術などに対応しています。

朝田副院長プロフィール

行徳総合病院 副院長 朝田 尚宏

◆出身大学
金沢大学医学部医学科
金沢大学大学院医学研究科
◆学会認定資格
•日本整形外科学会 認定整形外科専門医
•日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医
•日本整形外科学会 認定スポーツ医
•日本リウマチ学会 リウマチ専門医
•日本整形外科学会 認定リウマチ医
◆所属学会
•金沢大学医薬保健研究域医学系協力研究員
(地域医療救急・整形外科学)
•JPTECプロバイダー
•ICLS修了
•日本整形外科学会
•日本脊椎脊髄病学会
•日本リウマチ学会
•日本人工関節学会
•日本創外固定・骨延長学会
•日本癌治療学会
•中部日本整形外科災害外科学会
•AO ALUMNI ASSOCIATION(AOAA)
•International Society of Limb Salvage (ISOLS)
•日本脊椎・脊髄神経手術手技学会
•日本関節病学会
•日本肩関節学会
•中部リウマチ学会
•日本外傷学会
•JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会)
•日本骨折治療学会
•日本脊髄障害医学会
•日本臨床リウマチ学会
•金沢運動器疼痛フォーラム世話人
•病院管理者研修会「医療安全の向上を目指すトップマネジメントの責任・役割」修了
•獨協医大脊椎カバダーセミナー修了

行徳総合病院のご案内

所在地 〒272-0103 千葉県市川市本行徳5525-2

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連絡先 TEL:047-395-1151(代表)
理事長 中村 哲也
開設 昭和55年10月
病床数 307床
診療科目 内科・外科・整形外科・脳神経外科・循環器内科・消化器外科・消化器内科・腎臓内科・糖尿病内科・人工透析内科・乳腺外科・眼科・耳鼻咽喉科・婦人科・皮膚科・泌尿器科・肛門外科・小児科・神経内科・麻酔科
行徳総合病院 整形外科 https://gyo-toku.jp/med-dept/seikeigeka.html